1997年に日本でも導入が解禁されたストックオプション。
最近では、ベンチャー企業の増加や好景気により再び注目が集まっています。
しかし、ストックオプションは普段聞きなれない言葉でもあるため
- ストックオプションとはそもそも何?
- ストックオプションにはどんな種類があるの?
- ストックオプションのメリットやデメリットが知りたい
など、色々な疑問が出てきますよね。
そこでこの記事では、
- ストックオプションとは分かりやすく言うと何?
- ストックオプションの種類や、新株予約権との違い
- ストックオプションの社員側と企業側、双方のメリットやデメリットについて
まとめていきたいと思います。
1.ストックオプションとは分かりやすく言うと何?ストックオプションの基本
最初に、ストックオプションの基本についてまとめていきたいと思います。
1-1.ストックオプションとは
ストックオプションとは、簡単に言うと
「企業の従業員や役員などが、決められた条件(期間や価格、株数)のもと、自社株を取得できる権利」
のことを言います。
その場合、実際に自社株を購入し、取得することを「権利を行使する」、そしてあらかじめ決められた価格のことを「権利行使価格」と言います。
権利行使価格が時価よりも高ければ、権利を行使して株式を購入し、そして売却すると売却益を得ることができます。
1-2.ストックオプションを行使するまでの仕組み
ストックオプションを行使するまでの仕組みについて解説します。
①権利を付与される
最初に、ストックオプションの権利を企業から付与されます。
ストックオプションの権利を誰に付与するか、と言う点においての法的な決まりはありません。
しかし、インセンティブとしての役割を果たす面も大きいことから、企業ではまずは役員などから付与し、そして次に一般社員の中でも、売上や会社への貢献度が高い社員を取締役会などで決めることが多いようです。
②権利を行使できるタイミングまで待つ
ストックオプションでは、あらかじめ権利を行使できる期間が決められています。
例えば「上場後5年以内」などの条件があります。
※ただし、ストックオプションの税制の優遇措置を受けるには、「付与決議の日後2年を経過した日から付与決議の日後10年を経過するまでの間」
などの期間が決められています。
③権利を行使する
権利を行使できる条件を満たせば、権利を行使し、株式を購入することができます。
この場合、権利行使価格より時価が高ければ、売却した場合に売却益を得ることができます。
一方で、権利行使価格より時価が低い場合は、権利を行使せず株式を購入しなければ、社員は何の損もありません。(通常型と株式報酬型の場合)
④株式を売却する、もしくはそのまま保有する
権利行使価格より時価が高い時に株式を売却すれば、その差額を売却益として得ることができます。
もちろん、株式を売却せず、そのまま保有していても構いません。
【ストックオプションの権利行使の例】
例えば前提条件として
- 権利行使価格は1万円
- 5年以内であれば50株まで購入できる
- 権利行使の株式時価10万円
の場合、権利行使して株式を取得後、すぐに売却する場合は、
9万円/1株×50=450万円
が売却益となります。
1-3.ストックオプションの仕組みのポイント
ストックオプションの仕組みのポイントを解説します。
①誰にストックオプションの権利を付与するかは、決められていない
前述しましたが、ストックオプションの権利を誰に付与するかは、決まりはありません。
しかし、インセンティブとしての役割を果たすことから、まずは役員など、そして次に一般社員の中でも売上や会社への貢献度から取締役会などで決められることが多いようです。
②ストックオプションの発行数は、発行済株式の10%程度が目安
ストックオプションの発行数についても、特に決められていません。
しかし、割合としては発行済株式数の10%くらいの割合が妥当だと考えられています。
ストックオプションの比率が多すぎると既存の株主の不利益となることもあるからです。
③上場する予定がない企業は、導入する意味がほぼない
ストックオプションは、株式を自由に売買できる上場企業のみ、メリットがある方法です。
もし企業が非上場であれば、株式を売却するのにも制約があり難しいからです。また、非上場の企業の株式はほぼ購入される見込みがなく、ストックオプションの権利を行使できるような状況にはならないと考えられるからです。
そのため、ストックオプションの導入においては、すでに上場している企業や、起業まもなく、これから上場を目指す企業のみ意味がある制度と言えます。
2.ストックオプションの種類
次に、ストックオプションの3種類について、それぞれ解説していきます。
2-1.通常型ストックオプション
一般的なストックオプションは、通常型ストックオプションと呼ばれます。通常型ストックオプションの特徴として
- 権利行使価格は、ストックオプションの権利を付与した価格以上に設定する
点が挙げられます。
ストックオプションのインセンティブの要素を反映した形となっており、企業の業績が良く株価が上昇した分、売却時の売却益が大きくなります。
そのため、社員の士気を高めることが可能というメリットもあります。
2-2.株式報酬型ストックオプション
株式報酬型ストックオプションの特徴として
- ストックオプションの権利行使価格を1円などの低い価格で設定する
点が挙げられます。
そのため、社員が権利を行使する場合は、社員が株式を購入する元手はほとんどかかりません。
つまり、株式報酬型ストックオプションは権利を行使する時点での株価そのものを受け取ることができると言うことです。
近年では増加しているストックオプションの種類であり、多くの企業では退職金の代わりなどとしています。
2-3.有償型ストックオプション
有償型ストックオプションの特徴としては
- ストックオプションの権利を付与する際に、その時の株価で新株予約権をあらかじめ発行してしまう
と言う点です。
新株予約権を発行することになるため、上記の2つの種類とは異なり、権利を行使せず株式を購入しないという選択肢はありません。
そのため、有償型ストックオプションでは、権利を行使するタイミングによっては損をしてしまうという可能性もあるのです。
2-4.ストックオプションと新株予約権との違い
ストックオプションと新株予約権は、同義語としてとらえられています。
しかし、ストックオプションは新株予約権のうちの1種類であり、新株予約権と全く同じ意味のものではありません。
ストックオプションの特徴は権利を付与されるのは社員や役員などに限定されていますが、その他の新株予約権については、誰でも権利を取得できるものもあります。
3.ストックオプションのメリットとデメリット
最後に、ストックオプションのメリットとデメリットを、社員側と企業側の2つの側面からまとめていきたいと思います。
3-1.ストックオプションの社員側のメリットとデメリット
ますストックオプションの社員側のメリットをまとめていきます。
①ストックオプションの社員側のメリット
ストックオプションの社員側のメリットとしては
- 大きな売却益を得られる可能性がある
今後、大きな成長の見込めるベンチャー企業などのストックオプションの権利を付与されれば、権利を行使した際に大きな売却益が得られる可能性があります。
例えば、今では誰もが馴染みのあるメルカリもストックオプションを採用しており、中には億単位の大きな売却益を手にした社員もいるようです。
- リスクがほぼない
ストックオプションは、通常型と株式報酬型であれば、権利は付与されても行使しなくて構いません。
つまり、権利行使価格が時価より高ければ権利行使すると売却益を得ることができますが、不景気などにより株価が低ければ、権利を行使する必要はなく、損をすることがないのです。
②ストックオプションの社員側のデメリット
一方で、ストックオプションを付与された場合の社員側のデメリットは
- 景気や株価次第では、退職金がなくなったり、極端に少なくなったりする可能性もある
ストックオプションを退職金として導入されていた場合、その時の景気や株価次第では、退職金がない、または極端に少なくなってしまうと言う可能性も考えられます。
- 自分の業績や貢献度とインセンティブ金額が連動しないこともある
ストックオプションをインセンティブ目的として導入されている場合も、その時の景気や株価次第では、インセンティブがない、または極端に少なくなってしまうと言う可能性も考えられます。
この場合、いくら自分が業績を上げ会社に貢献していたとしても、それとインセンティブの金額が連動しないということになり、モチベーション悪化の原因ともなり、社内の士気の低下を招く恐れもあります。
3-2.ストックオプションの企業側のメリットとデメリット
次に、ストックオプションの企業側のメリットとデメリットをまとめていきます。
①ストックオプションの企業側のメリット
ストックオプションの企業側のメリットとしては
- 企業内をまとめ、士気を高められる
株価が上がれば、ストックオプションの売却益も大きくなるわけなので、企業内がひとつの目標を持つことができ、士気を高めることができます。
- 現在の財源が少なくても、優秀な人材を確保できる可能性がある
ストックオプションは、現在の財源が少なくても権利を付与することが可能です。よって将来的な利益を納得させることができれば、現在の手持ちの現金などがなくても、優秀な人材を起用することも可能です。
②ストックオプションの企業側のデメリット
一方で、ストックオプションを付与した場合の企業側のデメリットは
- 権利行使のタイミングで社員が企業を辞めてしまう可能性がある
ストックオプションの権利行使のタイミングで社員がストックオプションの権利を行使し、売却益を得るとすぐに辞めてしまうという可能性もあります。
そのため、ストックオプションを段階的に行使できるようなベスティングと言う制度を導入している企業もあります。
- 導入に対してのハードルが高い
ストックオプションは、誰に何株権利を付与するかをよく検討しなければならない点や、また、税務上でもメリットやデメリットがあるため、導入に対してのハードルは高いと言えます。
また、権利行使のタイミングで優秀な社員が辞めてしまい、人材が不足するケースなどもあるので、導入には慎重になった方が良いでしょう。
4.まとめ
この記事では、ストックオプションについてまとめました。
ストックオプションは、インセンティブや退職金の目的で、企業が社員に対してあらかじめ決められた期間や価格で自社株を購入できる権利のことを言います。
もし株式を購入するタイミングで株価が上昇していれば、社員は大きな売却益を得ることができます。また企業としても、採用時点で財源がなくても、ストックオプションの利益があれば優秀な人材を確保できる可能性もあるなどのメリットがある制度です。
しかし一方でストックオプションは景気や株価の影響を大きく受けるため、株価が下落した場合、社員はインセンティブや退職金を全く受け取れない、受け取れてもごくわずかという可能性もあります。
また、企業にとっても、ストックオプションの権利を行使してすぐに優秀な社員が辞めてしまう恐れもあるなど、デメリットもありますので、導入には慎重な検討が必要です。